田沼のていじろ

田沼のていじろ

一瓶塚稲荷神社の門前町として発展したとされる田沼。
毎年3月初めの午の日をはさむ日曜日に行われてきたこの神社のお祭り『初午祭』は田沼っ子の心の原風景。
ガチガチに寒かったこの冬を終わらせる散歩は、田沼の丁字路から初めてみませんか?

初午は日本全国でその風習が残る年中行事のひとつ。稲荷神社の本社、京都の伏見稲荷大社にお祭神・宇迦御霊神(うかのみたま)が光臨した日が2月の初午の日だったことに由来する。新暦・旧暦での差はあれど、全国各地でこの日はお稲荷さんにちなみ、五穀豊穣を祈るお祭りが開催されている。

田沼の初午は旧暦にあたる3月の初午の日に行われてきた。三百年以上の歴史を持ち、佐野・葛生など近隣の中でもここまで古いお祭りが残っているのは希有。神社のすぐ目の前、当代で14代目となる『いせや呉服店』の髙澤 尚子さんによると…。
「昔はね、すごかったんですよ。もう動けないくらい人が出て。サーカスとか見世物小屋とか、スマートボールみたいな遊戯場とか、とにかくいっぱい出てね。植木市も盛り上がってましたしね。うちはよく駐車場貸したりトイレ貸したりね(笑)。お客さんよりそんなことの方が多いくらいだったけど、それは初午だから、ていうんでやってましたね。商店街はどこもみんなそんな感じですよ。もちろん今だってそう」

そういえば画家の安藤 勇寿さんも同じようなことをおっしゃっていた。年に1度、初午の日は、小銭を握りしめて近所の子どもたちと連れ立って“まち”に行ったと。
安藤さんの生まれ育った御神楽地域から見た場合、この丁字路一体は“まち”。
そして丁字路イコール初午、という原風景なのだ、と。

どこかおっとりとして気のいい田沼っ子たち。
「商売っ気より、人と人とのつながりに重点を置く特徴があるのかもしれないよね」
と、いせやの尚子さん。商店街の次世代には高学歴で市外県外に飛び出している30〜40代も多いとのことだが、なぜか「最後は田沼に帰ってきたい」という子どもたちが多いとか。
「ほんと、なんでなんだろうね?なんにもないのにね〜(笑)。まぁ、人かな?人がいいから戻ってきたいのかな?(笑)」

佐野と葛生にはさまれた、日本のへそ・田沼。
真ん中には何もないようでいて、実は目に見えない求心力が渦巻いているのかもしれない。

いせや呉服店

  • 栃木県佐野市田沼町554
  • 0283-62-0011
  • 9:00~19:30
  • 毎週水曜日

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