コーヒーハウス ロペ
田沼で一番最初にできた横文字のコーヒーハウス
薫り高いコーヒーの湯気とケチャップが焼ける音。昭和の大人がくつろぎ、昭和の少年少女は背伸びをした。田沼に横文字の店がなかった昭和45年の開業から48年。平成最後の年に食べられる“喫茶店のナポリタン”へ最敬礼であります。
90年代に台頭したカフェブームが日本全国で一般化し、昔ながらの喫茶店の肩身がせまくなりかけたここ10年ほどの間に、いわゆる“昭和レトロ”な喫茶店が復活劇をとげつつある。座り心地のよい椅子で、自分で持ってくるんじゃなくお店の人が持ってきてくれるコーヒーをいただく。
クリームソーダをチューチューしながらパスタじゃなくスパゲッティが食べたい日があってもいいですよね?
昭和レトロ、とひとくちにいっても、駄菓子や懐かし給食のようなキッチュなものから、アイビー旋風の中、銀座を闊歩した“みゆき族”のようなアメリカントラッドの一派がもたらした粋で洗練された本物志向の文化全般あたりまで、今じゃないものはざっくり全部“昭和レトロ”なわけだが、48年間の歴史の中で今回初めてメディアの取材に応じてくれたこの老舗は、どちらかといえば“昔、相当イケてた”と想像される和田さんご夫婦が切り盛りするスマートなお店。いやもちろん今も相当素敵なご夫婦だし、誤解を恐れずに言えば20代の開業当時より70代の今の方がイケてるんじゃないかとも思われる。
そんな和田さん夫妻、高校教師からの脱サラでお店を始めたのは結婚の翌年だったというから飛んでる!
「もちろん親戚中から反対されましたよ(笑)。今思えばよくやったもんだと思います。学生時代、新宿の喫茶店でアルバイトをしてまして。その頃からの夢だったんです。ゆったりとしたスペースを確保しながら落ち着いた雰囲気の中でコーヒーを飲んでいただきたいってことでこういう店にしたんですが、当時の融資先からはレストランでもないのに内装にお金かけすぎなんじゃないか?コーヒーの単価じゃ元がとれないんじゃないか?て、随分心配かけてしまいました。結果的には昭和52年に立て替えたこの雰囲気が当たって、40~50年代は夜遅くまで…無我夢中で働きましたね」
味けないクロス貼りとは一線を画す壁面のブロックや天井を覆うタイル板の仕様。間仕切りをよく見るとカットガラスがあしらわれ、L字の店内どこからも見える中庭にはライトアップ用の照明が鎮座。そしてそれらは美術館のような大きな1枚ガラスから臨むことができる。テーブルすべてにちょこんと挿してある生花は開店当初から絶やしたことがないという。この昭和ミッドセンチュリー感?…たまらない。すべてちゃんとしてるところが素敵すぎる。
「最初の頃はアルコールも出していたし、メニューももっとあったんですけどね。時代の流れで“和田ちゃん、もうナポリタンの時代じゃないよ〜”なんていわれたこともあったけど。これしかできないですからね。始めた頃から麺はモチモチ感を出すために太めの1.4ミリ。鉄板皿の上にのせてジュージューいってるとこを運びます」
ナポリタンという食べ物の概念を1ミリもそこなうことなく目の前に現れるパーフェクトなナポリタン。完全体のナポリタン、といっても過言であるまい。これ、ずっとあってほしい。
いつまでも食べていたい…。
「初めた頃は、漠然と60歳くらいまでかな〜なんて思ってたんですけどね。以外と60歳、若かったです(笑)。今年の春で74になりますが、ひとまず終わりは決めずやれるとこまでやるつもりです。開店当時、それぞれやってきてた男女が、この店で出会って結婚して、子どもができて見せにきてくれて、さらにその子どもたちが結婚して孫ができたと見せにきてくれて。ロペの味を三代に渡って愛してくれる姿を見られること。こんな幸せはありませんね。ナポリタンで終わりたいと思ってますよ」
田沼が誇る名店は年中無休。今日行ってみたいと思ったら今日行ける。コーヒーもナポリタンも紅茶もサンドイッチも…静かにあなたを待ってます。
コーヒーハウス ロペ - Coffee House ROPE’ –
- 栃木県佐野市田沼町1241
- 0283-62-2099
- 10:00~19:00(L.O.18:30)
- 木曜日