SANOMEDIA×さの百景 第22回
人丸神社

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井腰 真由美

フルーツラインを北へ向かい10分ほど車で走った小中町の一角に万葉の歌聖、柿本人麻呂を祀った人丸神社があります。

人丸神社のヒトマルとは、「火止る」だと伝えられ、防火神、また学業成就、交通安全の御利益がある神社として地元の人々に信仰されてきました。

神社の周りは湧泉池になっていて、下方の水田を潤す水源として利用されています。

境内を歩くと、池の水面に睡蓮が茂り、隙間から白く可憐な花を咲かせています。のぞき込むと、たくさんの大きい鯉が姿を現しました。気持ちよく泳ぐ鯉の姿に目を奪われつつ先へ進むと、池を二つに分けるかのように橋がかかっています。橋を渡ると大きな屋根があり、その下には石で作られた休憩スペースが設けられていました。私はそこへ座りほっと一息、休憩をしました。

境内への道へ戻り、進んでいくと手水舎があります。手を清め、さらに奥へ進み、歴史を感じさせる神楽殿の先には、ふっくらとした狛犬が拝殿を守っています。拝殿の上部には二体の龍の彫り物があり、以前訪れた時に宮司さんから「この龍は親子で、とても珍しいんだよ」と話を伺ったことがあります。その時、拝殿内の天井絵も近くで見させていただきました。天井絵は田村安貞によって描かれていて、今でも鮮やかな色彩の鳥や花々を見ることができます。

お参りを済ませ、帰り道に社務所へ立ち寄りました。この社務所では、鯉が描かれた絵馬や学業成就のお守りなどと御朱印もいただけます。

柿本人麻呂は「下野の安蘇野の原のあさあけに もやかけわたるつづら草かな」と詠んでいます。人丸神社ののどかな風景を思い、歌にしたのではと感じました。

境内は爽やかな風が吹き抜け、清らかな水の中では優雅に鯉が泳いでいます。私は心地よい清涼感を感じるひとときを人丸神社で過ごしました。

これからの季節、涼を求めて人丸神社を訪れてみてはいかがでしょうか?