ワインコラム

難しいと思われがちなワインの世界を、初心者の方にも身近に感じてもらえるよう、分かりやすくご紹介していく連載コラムです。

Vol.4 ヴァン・ド・プリムールのお話

こんにちは、sangaの石川です。
すっかり秋も深まり晩酌が捗る季節となりましたが、みなさんはいかがお過ごしですか。

さて世の中には2種類の人間がいます。
ボージョレ・ヌーボーときいて、「あぁ!」と目を輝かせる人と、「あぁ」と目が曇る人です。
今回は後者に向けて。

11月になるとニュースなどで話題となるボージョレ・ヌーボー。今年は11月19日(木)が解禁日です。
前回も書いたとおり、様々な困難から産み出された2020年ヴィンテージは大変良好な年です。
さぁ!今年こそはちょっといいボージョレ・ヌーボーを飲んでみませんか?というお話。

「ボージョレ・ヌーボーってなんか水っぽいしさ、あんなのワインじゃないじゃん」
とワイン保守派にすこぶる評判がよくありません。

確かに数年前、大手量販店がこぞってペットボトルでワンコインヌーボーを売り出した際は、
「インクを水に溶かしたのか」
「これなら水の方がマシ」
という感想しか出てこないものが多かったのも事実です。
コレではファンが増えないのも然りでしょう。
今でも“とにかく1円でも安く”を標榜するヌーボーもあるのですが。

ちなみにヌーボーの売価、ほとんどは航空運賃と税金、そして国内流通費と僅かな販売者利益で成り立っています。
一本あたり、運賃が約400円、税金が約150円、国内輸送費が約100円、これで約650円。これに輸入業者、卸業者、小売業者の利益が足される構造です。
じゃぁ、1,000円ちょっとで売られているヌーボーそのものの原価は幾らなんだと…

残念ながらワインのおいしさというのは(ある程度)値段に比例します。
手間暇とコストの反映ですから、美味しいものを飲もうと思えばそこそこの対価は必要となってきます。
そうですね、おすすめの目安は2,000円〜2,500円くらいのものでしょうか(sangaで提供するのは3,000円近いモノです)。

「高っ」「ヌーボーにそんなに?」
なにせ飛行機で飛んでくる特急便ですから(普通は船便で輸送費は50円くらいです)、ソコを差し引けば小売価格1,500円〜1,800円くらいのレベルです。私達が家飲みに買ってみるちょっといいワインに近いですね。

そのクラスになると、甘酸っぱい芳しい香り、フレッシュな果実味に活き活きとした酸、骨格を支える僅かなタンニンと、しっかりと焦点の合った味わいになります。
ワインとして素直に「あ、美味しい…」と言えるレベルです。

そう、この「ワインとして」というのが重要なんです。
専門的な話は省きますが、ヌーボーはいち早く大量に生産するために普通の赤ワインとはちょっと異なる作り方をします。
ヌーボーのために割り切って造っていると言ってもいいでしょう。

一方で一部の生産者達はヌーボーと割り切らず、いつものワインと同じように手間暇とコストを惜しまずに掛け、プレミアムなヌーボーを造り出します。
あくまで「その年に出来た最初のワイン」としてヌーボーを出荷します。

それが標題のヴァン・ド・プリムール。
フランス語でVin de Primeur、「最初のワイン」「一番目のワイン」という意味です。
要はボージョレ・ヌーボーと同義で使われていますが、高レベルの生産者達はあえてプリムールと表現することが多いように感じられます。
ヌーボーはヌーボーとして分断されるのではなく、あくまでもその年の1番目という連続性のなかにあるものなのだ、という哲学すら感じさせます。
プリムールと書いてあればすべてが高レベルとは限りませんが、ワイン選びの一つの参考にしてみてください。

今年は多くの飲食店、ホテルで解禁イベントを自粛する動きが大きいようです。
それならばぜひご自宅でいつもよりちょっといいヌーボーをあけてみませんか?
洋食だけで無く、お鍋や焼き鳥などとも相性は抜群です!
絶対幸せな気分になれますよ!

それではまた次回!

プロフィール

洋風食房sanga オーナー石川 英明(いしかわ ひであき)

  • 国際ソムリエ協会(A.S.I.) 認定ディプロマ
  • 日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
  • 英国WSET(Wine & Spirits Education Trust)認定国際上級資格