熊田木材工芸 -KUMAMOKU-

熊田木材工芸 -KUMAMOKU-

0からはじまった銘木家具作り

昭和55年の創業以来40年以上、樹齢数百年の希少な天然樹木を相手に、一心不乱に美しい家具をつくり続けてきた『熊田木材工芸』。その愚直なまでの仕事ぶりが評価され、全国各地に根強いファンがいる。
熊田木材工芸の作業場には、艶のある杢目に風合いを感じる一枚板のテーブルが所狭しと並んでいる。作家である熊田侠児・悦子夫妻の手にかかると、けやき、松、花梨、黒檀、ひのき等、あらゆる材種の銘木が、美しい輝きを放つ家具として生まれ変わる。これまで世に送り出した作品は、大小含め3,000を優に超えるという。

「すべては生活していくためだった」と笑う侠児さんは、作品をつくり、完成品を配送するというすべての工程を奥さんの悦子さんと2人で行ってきた。「最初のころはなかなか思い通りにならないことも多かったですね。気に入った木があって始まるんだけど、やっていくうちに気に入らないって何度もやり直してね」と悦子さんは創業当時を振り返る。侠児さんはもともと家具づくりの道に興味があったわけではなく、親戚の材木販売を手伝ううちに家具づくりに携わるようになっただけで、ノウハウなど何もなかった。すべては0からのスタートだった。試行錯誤を繰り返しながら、コツコツと技術を磨いていく他に道はなかったのだ。

「創業当時は失敗もいろいろとしたよ。でも失敗したままで放り投げちゃうわけにいかなかった。材料も銘木だから高価だし、それを失敗したからってポンポン捨てられないし。うまくできなかったからって、助けてくれる親方がいるわけじゃなかったからね。なんとかものにしなきゃって毎日必死だった」と侠児さん。そうした生活が20年程続いたという。そこから今日まで銘木家具作り一筋でやってきた。

一枚板のテーブルの側面は、凹凸のある形状で風情を感じるものが多いが、もともとこのような形をしていたわけではない。樹木のもつ特性や年輪の形状などを見ながらさらに美しくなるように、手作業によって起伏がつけられているという。天面とのバランスや杢目の出方などから、より滑らかに家具として馴染むように削られ、側面の形がデザインされていく。一枚板のテーブル制作には、熊田夫妻が長年培ってきた技術と経験のすべてが盛り込まれている。

撮影するカメラも映り込むほど歪みひとつない鏡面仕上げは、ウレタン等で慎重に塗装を重ねて磨きあげることで出来上がる。
使う人と共に時を過ごす木の変化を最小限に抑え、最も美しい状態を保つための塗装方法を独自に編み出した。
しっかりとした加工はテーブルを美しく見せるためと同時に、加工されてなお生き続ける木の“ゆらぎ”を抑える役目も果たす。
熊田木材工芸の一枚板テーブルは、親子2代、3代に渡って使い続けることのできるものだ。

これまで銘木家具といえば、和室に合うものというイメージが強かったが、ここ数年では北欧テイストのインテリアと合わせてダイニングルームに置かれたり、ローソファとの組み合わせも多くなってきたという。一流といわれる木はどんなテイストとも響きあい、共鳴しあって美しい空間をつくり出していくのだろう。

創業から40年以上、一心不乱に銘木家具作りに取り組んできた熊田夫妻。職人気質を思わせる徹底した仕事ぶりからは想像もできないほど柔らかい人柄で、訪れた人たちを家族のようにあたたかく迎え入れてくれる。銘木を使った家具に興味をお持ちの方はぜひ熊田木材工芸を訪れてみてほしい。

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