Vol.6 幼児教育は環境による教育
アフォーダンスという言葉がある。
アメリカの知覚心理学者ジェームズ・J・ギブソンによる造語で、環境が動物に対して与える「意味」のこと。
例えばドアノブの形をデザインする際に、「押す」「引く」を直感的に分かる形状にするなど、様々なデザイン領域でUI(ユーザーインターフェース)としてもアフォーダンスが用いられている。
幼児教育におけるアフォーダンスとは、場所や遊具が持つ「ねらい」と考えている。
例えば、子どもを広い原っぱに連れて行ったらすぐに走り回るし、登りやすい木を見つけたら自然と登ってみる。ボタンがあったら押しちゃうし、ちょっと高くなっている場所があったら座ったり、上ってジャンプしたりする。これが場所や物などの「環境が幼児に与える意味」に対しての自然な行動だ。
置かれた環境に対して、幼児は直感的に行動する。だから幼児教育の現場において、その環境を作ることがすごく重要になると小林理事長は熱く語る。
例えば、テーブルの上に座ってしまった子どもに対して『そこはテーブルでしょ。座らないで!』と注意したことはないだろうか?
そのテーブルはきっと、座るのにちょうどいい高さや大きさだったと考えられる。もしそのテーブルがもう少し高かったり、花が飾ってあったら子どもはテーブルと認識して座らないかもしれない。
このように子どもの行動には、それを促す環境があることを意識して、もし間違った行動をする子どもがいたら、何がそのような行動をさせたのか、注意するのではなく環境を見直すきっかけにして欲しい。
もう1つ重要なのは、自由に遊べる環境を整えること。
遊びの中には、子どもを育てる重要な要素がたくさん詰め込まれている。
「させる教育は昭和の教育」で今の時代にはそぐわない。これからの時代、自分の頭で考え、自ら行動できる人になるための教育が必要。だから、指示や禁止をなるべく言わないようにし、子どもが自分で考えて、自分のやりたいように遊べる環境を作ってあげることが重要になる。
自然や生き物に触れることで感じること。友達と協力すること、競うこと。痛みを知ること。新しいことに積極的にチャレンジすること。遊びの中から本当に多くのことが学べるのだ。
小林理事長は「幼児教育は、読み書き・計算を教えることではない」と語る。
確かに読み書きや計算、大人の教え込みの発表会や組体操など、先生が教えてくれたことができるようになると子どもだけではなく、喜ぶ親も多いだろう。
もちろんそれも学びのひとつだが、色々なことを感受性豊かに吸収する時期だからこそ、詰め込みではない教育が必要なのではないだろうか?
幼児教育は環境による教育。
子どもが自ら考え、遊び、そして多くの学びを自ら得られる「環境を整えること」が幼児教育の現場でますます重要になってくると小林理事長は締めくくった。
プロフィール
小林 研介
(こばやし けんすけ)
- 呑竜幼稚園 理事長・園長
- 佐野市幼稚園連合会 会長
- 栃木県仏教保育協会 会長
- 佐野日本大学短期大学 教授
- 佐野市サッカー協会 副会長
- 私立幼稚園経営者懇談会 副会長