Vol.11 幼児教育に対する誤解
『幼児教育』と聞いてみなさんはどんなイメージを持たれるだろうか?
私は正直なところ、『幼児教育』=『英才教育』だと思っていた。
はやくから教育を受けさせることで、子どもの将来が無限に広がる…だからこそ早期教育は必要なのだろうと考えていた。
思い切って小林理事長にその疑問を投げかけてみた。
すると小林理事長は「『教育』と聞くと先生と生徒(子ども)がいて、なにかを教えることだと思われている方は多いと思います。昭和の時代でいう『読み書きそろばん』の概念がまさにそれでした。でも子どもたちに本当に教えなければならないことはそんなことじゃないんです」と語りはじめた。
「先生や大人が指示したことに付き従っていることが『良いこと』なわけじゃない。自分で考えて判断できるようにならなきゃ。先生や大人にとって都合のいい子が良い子なわけじゃないんです。善悪も含めて、自分で判断できる子を育てていかなくちゃいけないと僕は思うんです」
「それと、人の痛みがわかること。お友だちの気持ちがわかる子になってもらいたい。こうしたらうれしいとかこうしたら悲しいとかね。それからお友だちといっしょに協力すれば、ひとりでは成し得なかった大きなものを作り上げられるということも学んでほしいですね」と笑顔を見せた。
アメリカの経済学者、ジェームズ・ヘックマンが行った調査で『ペリー就学前プログラム』というものがある。
ミシガン州に生まれた3~4歳の子どもを対象に実施された教育プロジェクトで、遊びや自主性を重んじる教育を施し、プログラム対象者と非対象者のグループを40歳まで追跡調査したという。
その結果、就学前教育を受けた子どもたちは、学歴が高く、生活保護受給率や逮捕率も低いという結論に至った。
こうした研究が、幼少期をどのように育てるかがいかに重要かを裏付けている。
幼児教育とは、人生の土台をつくることであり、人と接する中で培い、決して自分勝手にならず、主体性を持ってなにかに取り組む姿勢を育てることではないかと思った。
プロフィール
小林 研介
(こばやし けんすけ)
- 呑竜幼稚園 理事長・園長
- 佐野市幼稚園連合会 会長
- 栃木県仏教保育協会 会長
- 佐野日本大学短期大学 教授
- 佐野市サッカー協会 副会長
- 私立幼稚園経営者懇談会 副会長