SANOMEDIA×さの百景 第26回
大日尊 鑁阿寺

鑁阿寺、通称「大日さま」は足利市民にとって、とても身近なお寺だ。私も小さい頃、散歩がてら祖父母にいつも連れてきてもらっていた。何かのお祭りで、焼きトウモロコシを買ってもらったことをおぼろげに覚えている。

実家を離れて一人暮らしをするようになってからも、帰省するたびに大日さまを訪れていた。10年ほど前に足利に戻ってきてからは、より頻繁に散歩するようになった。若い頃は特に感じなかったが、再びこの土地で暮らすようになって、祖父母から受け継いだ時間のようなものを意識するようになり、大日さまを訪れるたび、故郷に帰ってきたのだな、と実感するようになった。今は、週末の犬の散歩コースになっている。

釈迦の弟子の一人に、賓頭盧という人物がいる。神通力が強く、病気を治す力も持っていたそうで、日本ではこの像を堂の前に置き、撫でると除病のご利益があるとされ、そのことから撫で仏の風習が広まったのだそうだ。

この賓頭盧の像が、大日さまの本堂にも安置されている。市民からは「おびんずるさま」と呼ばれている。このおびんずるさまの見開かれた目はとても迫力があり、薄暗い本堂においてその真っ白い眼球と真っ黒い瞳はひときわ目立って、ちょっと怖い。いつか母にそのことを話したら、母も小さい頃は怖かったと言っていた。そのちょっと怖い風貌からか、なんとなく恐れ多く、撫でることはいまだにできていない。

そんなことを考えながらまた大日さまの境内を犬連れで散歩している。緑豊かなこの場所へ来ると、少し気分が軽くなるような気がする。小さい頃から親しんできた場所なので、安心するのだろうか。本堂の前を通りかかると、祖父母や母らを見守ってきたおびんずるさまが、今日も変わらずぎょろりと私と犬を迎えてくれた。