バス マイ ライフ

バス マイ ライフ

佐野市営バス
さーのって号、つぎ、停まります。

『さのまる音頭』(ダイアモンド ✡ ユカイ作詞)の歌詞では、あれほどリフレインされまくる「さーのって号」だが、さてみなさん本当のところどれくらいご存知だろうか。ややもするとまだ一度も乗車したことのない方が多いかもしれない。そこで、調べれば調べるほど「利用しないのはもったいない!」という事実が浮かびあがる。この市営バスの魅力を、今回はあますところなくお届けしていく。つぎ、乗りたくなります。

地域の足は、地域の見張り番に

葛生駅近くにある“さーのって号”の車庫。1日に1台平均300kmほど走るというバスたちの家はここにある。のどかな風景の広がる車庫の事務所で、市営バス運行業務受託者の大新東(株)の皆さんにこのバスの魅力を聞いてきた。

– 様々なローカル線がある中で『さーのって号』の特徴ってどんなところなんでしょう?

神長さん
やはり自由乗降区間を設けていることでしょうか。町中を走る基幹線と犬伏線以外の自由乗降区間では、時刻表の時間内なら路線上、停留所じゃなくてもどこでも乗り降りができるんです。 また一部の路線では、予約によるデマンド運行(定時定路型)を行っていますが、運行の1時間前までに“この時間(何便)に○○あたりから乗る”と予約をいただければ迎えにいくわけです。秋山学寮や蓬山ログビレッジへレジャーなんかにでかける県外からのお客様には、行きのバスで帰りの便を予約すれば現地に迎えにいくことができるわけです。

中島さん
定期的にご利用いただくことが多いのは、病院通いする年配のお客様とか、スクールバスが利用できない小学生や、佐野駅から佐日、松桜へ通う高校生あたりですね。氷室の小学生はこの春、6年生が卒業したら新しい1 年生が入って、あと兄弟で乗る子たちが2人いるので…出て入って3人(笑)。毎日ですから顔も覚えちゃいますよね。高校生たちは最近はバスの中じゃスマホをよく見てますかね。

神長さん
よく乗る年配の方たちもわりと決まってくるので、顔や名前をおぼえちゃいますね。営業所で今育ててるゴーヤとサヤエンドウは、お客様から教わって植えてるんです。種イモをもらったこともありますよ。ちっちゃいけどちゃんとジャガイモができました。

中島さん
お客様との距離が近いのが地域密着バスのいいとこでしょうかね。

– 365日無休、と聞きましたけど…!

神長さん
足がなくて困る人がいますからね。大雪のときは午前3〜4時にきてチェーンをはいて運行しました。台風のときも走りましたし、東日本大震災のときもなんとか燃料を調達して走らせました。震災以降は最新の無線機を導入したので、携帯電話の電波が届くところなら県外でも通じます。登山をするためにデマンド運行を予約されたお客様には、必ず連絡先を確認しておいて何かの際に備えます。実際、山で遭難された方から連絡が入ったこともありました。ドライブレコーダーは、運行路線近隣での火事や盗難などの捜査協力にも役立っています。

– 全国的に年配の方の自動車事故が問題になってますが、その面でも市営バスは救世主になりそうですね。

神長さん
運転免許の返納を前提に、営業所へ時刻表や路線の確認、利用の相談にみえる方もここ数年で増えてきました。実際、何人かは返納されましたね。

中島さん
最初はこの本数で大丈夫か、と不安になられるようですが、慣れてしまうと便利なんじゃないかと思います。運転手もいつも乗ってた人の顔が見えなくなると“どうしたのかな?”と思ったりします。元気な姿を見るとホッとしたりして。

– 公共交通機関としての役割とともに地域の見張り番みたいな頼もしさを感じます。

中島さん
運転手は優しい人が多いです。常に丁寧に対応できるよう心がけています。お子さんで多いのは“ピンポン押したい”ですかね(笑)。

神長さん
子どもはピンポンだよね(笑)。押したいんだよね。

中島さん
お母さんが“ごめんなさい!子どもが間違って押しちゃいました!”て謝られたりするんです。乗ってるのがその親子だけだったりすると“大丈夫だよ、また降りる前に押していいよ”なんてやったりします。

– 夢のダブルピンポンじゃないですか!

神長さん
それ目的で乗られると困りますけど(笑)。運転手はそのくらい、余裕を持った気持ちで対応できる人が多いと思います。地域密着のさーのって号ならではの良さなのかもしれないですね。