はじまる佐野創生

震災からよみがえった地域の拠点。
新たなまちづくりがスタート

先の東日本大震災で震度5強の揺れに遭った佐野市は、地震に強い地盤が幸いし、市内に目立った被害はほとんどなかった。

ところが、である。災害時に司令塔の役割を果たすべく旧本庁舎が被災。特に議場棟は柱が倒壊し、使用不能になった。

耐震診断では大規模な地震により建物が倒壊または崩壊する危険性が高いとされ、本庁舎は解体されることに。行政の各機能は仮庁舎へ移転を余儀なくされた。

あれからおよそ5年。全国津々浦々で地域の活力を今一度取り戻そうという流れの中で、「地方創生」という言葉を耳にするようになった。

地方創生とは例えば、各地域や地方がそれぞれの特長を活かし、地域振興や地域活性化を推進する中で、魅力溢れるまちを自らの手でつくっていこうとする取り組みである。

そうした時代の流れに呼応するように、平成27年12月、佐野市新庁舎が全面開庁。市民の利便性と行政効率の向上を視点に、これまでの分庁舎から総合庁舎となって業務を開始した。

市民にとっては「佐野創生」ともいえるエポックメイキングな出来事である。

特筆したいのは、強固な免震構造により地震に強い建物に生まれ変わったこと。同時に、災害対策本部室や非常用発電機の設置など有事に対して万全の措置を施した。

その一方で、市民に親しまれる地域のランドマークとしての役割も欠かせない。最上階展望ロビーの一般開放をはじめ市ゆかりのアーティストによる空間創造など、市民目線の取り組みが目を引く。また、地域コミュニティーづくりを念頭に置いた情報発信や場の提供のほか、子育てや育児に対応した機能・設備が随所に。住民サービスに力点を置いた事例は枚挙にいとまがない。

構想から完成まで足かけ5年をかけた新庁舎の完成により、わがまち・佐野の“百年の計”が新たにスタートした。

大地震にも耐えうる、骨太の新庁舎

大きな揺れによって使用不能になった旧庁舎の教訓を生かし、新庁舎は「地震に強い建物」を第一に建設計画が進められた。

7階建ての建物の足元は、地震が起きた際に地面の揺れを建物に伝わりにくくする「免震装置」を施工。空間の有効利用の観点から、免震装置の下に地下駐車場を設置した都合上、「柱頭免震」という特殊な方法を採用した。

最新鋭の免震装置は震度6強の強い揺れでも、机上に置いたペットボトルが倒れないという高い耐震性能を有している。

また、災害への対応から6階の大会議室は緊急時に災害対策本部室になるよう設計したほか、屋上には非常用発電機を設置し、大規模停電に備えた。燃料が満タンなら3日間の電気供給が可能だ。

ちなみに、屋上にはこのほかに、太陽光発電システムをはじめ排熱利用のコージェネレーションシステムなどのインフラ設備を配置。太陽光や地中熱など自然エネルギーの活用を図るための設計上の工夫が施されている。

市民の声に耳を傾け、市民が主役の市庁舎に

市は新庁舎の設計段階から、さまざまなワークショップを通して市民の声に耳を傾けてきた。

例えば7階の展望ロビー、1階の市民活動スペースなどが代表例である。特に、作品展示や講演会など多目的に使える市民活動スペースは、地域コミュニティーづくりにひと役買っている。また、1階ロビーの不用品情報掲示板は、家庭で不用になった物や譲ってほしい物など、市民の「譲ります・譲ってください」情報を掲示。不用品のリユース(再利用)を推進している。

ちなみに、月曜と金曜の11時〜14時は、佐野ブランドキャラクター・さのまるの出勤日。追っかけファンもいるなどアイドル並みの人気だ。

選りすぐりのアートを常設展示

新庁舎の空間は外も内も、芸術性の高いアートが常設展示されている。南側の市民広場に設置された巨大モニュメントは、奈良県在住の造形作家・吉本義人氏の作。1階ロビーの吹き抜けには、フランス在住のフレスコ画家・高橋久雄氏の作品が掲げられている。唐沢山をモチーフに現地制作された大作で、原材料に石灰を用いることから、石灰のまち・葛生との関わり合いも作品の見所の一つになっている。

また、地元・佐野市を拠点に活動する画家・安藤勇寿氏の絵画作品の展示や、同じく地元で活躍する木工作家が手がけたオブジェや家具が庁舎内の随所に。木の温もりと相まって、アートな空間を存分に堪能できる。

小京都をイメージした新庁舎の外観佐野市は「小京都」とも呼ばれ、旧市街地の街並みは碁盤の目のようになっていることから、建物の外観デザインは格子を意匠としました。テラコッタタイルを貼り付けた外壁の色は、旧佐野庁舎の外観の色を彷彿させます。

これは便利!足利銀行、佐野信用金庫、JA佐野、栃木銀行、ろうきんのATMが一同にそろってます!

安心できる空間づくりを藤原秀郷公のムカデ退治伝説にちなんだムカデベンチや、無垢材を使った木のベンチは、地元で活動する木工作家たちの作。また、さのまるのイラストがかわいいキッズコーナーや授乳室も完備。フレンドリーな空間づくりを心がけています。

親しみやすい市庁舎を目指して栃木県産材を多用した新庁舎は、清涼飲料水の自動販売機もウッド調。「自動販売木」という遊び心たっぷりのネーミングはインパクト大で利用者にも評判とか。その他、資料コーナーや投書箱など、市民への情報提供やコミュニケーションづくりのためのさまざまな取り組みを行っています。

絶好のロケーションが自慢最上階の7階は議会フロア。市民の声を反映し、その一角に展望ロビーを設けました。土日を含む毎日、午前8時30分~午後7時まで広く一般に開放しています。天気が良ければ南西に富士山が見える絶好のロケーションが自慢です。

佐野市役所