- 足利市通2丁目2624前澤ビル1F
- Tel.0284-22-4530
- 11:30-19:00
- 定休日:火曜(不定休)
2000年に前澤さんが新宿下落合で開いたお店が前身。足利では、ご主人の蔵書を中心とした、たくさんの本に囲まれた書庫カフェのような雰囲気に仕立てた。のんびり本を読むのも良し、前澤さんとの会話を楽しみに訪れるのもまた良し。
進学と同時に上京、以来40年東京に住んだのち、2013年にご主人とともに故郷の足利に戻ってきた。その品がありつつも気さくで朗らかな人柄に魅かれて、多くのお客様がお店を訪れる。女性だけの八木節チーム「足利八木節 女前Japan」の代表という情熱的な一面も。
2000年に新宿の下落合で「Café 杏奴」をスタートさせた前澤さん。2013年の帰郷と同時に足利に場所を移してお店を再開させた。
「知り合いから空いているテナントがあるから喫茶店をやってみないかと誘われて、そのときは断ったんだけど、1年後くらいに改めて声をかけてもらって。君ならできる、と熱心に誘ってもらったから、それならと始めてみたの。そうして気が付いたら20年。もう天職ね」
それまで飲食業界の経験は無かったが、それでも試行錯誤しながら20年やってきた。大事なのはまずやってみること。そして、こだわりすぎないことだという。
「東京時代の写真展とかライブとかは、私が企画したのではなくて、お客様が持ち込んできたものなの。足利に戻ってきてからも、この場所で地元の人たちが集まってライブなんかをやってくれている。来てくれたお客様がそれぞれで楽しんでもらえればと思っていて、こちらのこだわりを押し付けるようなことはしたくないんです。こだわらず、何でも受け入れてきました。私がいるところが『Café 杏奴』だから、それでいいの」
40年暮らした東京を離れ、ご主人といっしょに足利に帰ってくるのには大きな決断が必要だったろうと思ったが、どうやらそうでもないらしい。
「戻ってくることに特に抵抗もなかったの。東京はもう十分堪能したから、未練もありません。それにお店があった下落合は、実はそれほど都会でもなかったのよ。足利と変わらないくらい(笑)」
お店を再開するにあたり、宣伝などは特にしなかったそう。いつの間にか、昔の友人や同級生たちが見つけてくれた。まるで水が流れるみたいに自然体でお店を続けている。
そんな前澤さんのスタンスは、40年振りに住み始めた足利に対するまなざしにも表れている。
「上京する前は確かに賑やかでした。花火大会が象徴的で、その頃は街の中心近くから上げていたけど、今はずいぶん遠くで上げている。車社会になってしまったので、街なかの人の流れが無くなったみたい。でも街は生きているし常に変化しているから、昔のことを言っていても仕方ない。これが足利の現状だと受け入れてます」
衰退しているところも確かにあるけれど、街は生きているからそれも自然なこと。なんでも受け入れれば楽だし、こうしなきゃ、と思うと縛られてしまう。あまり考えすぎないくらいのほうがちょうどいいのかも。
逆に変わらないな、と思うところはあるだろうか。
「足利ってどんなところ、と聞かれたときには必ず、渡良瀬川と両崖山のある美しい街です、と答えてます。東武駅から降りて中橋を渡ってくるときに見える渡良瀬川と両崖山のある風景は美しく、かけがえないもの。それは本当に財産だと思う。街並みは変わったとしても、その美しい風景は変わらないわね」
これからの足利に期待することは何だろう?
「若い人たちがIターンで足利に来てくれたり、Uターンで戻ってきてくれたりしたけど、みんなすごく頑張ってる。昔の足利って、悪く言えば足の引っ張り合い、同業者を喜ばないところがあったけど、今はずいぶん変わってきた。みんなで協力して盛り上げようとしている。これだけは自慢したいし、そんな若い人たちに期待しています」
いつも明るく軽やかに出迎えてくれる前澤さん。そんな前澤さんと話がしたくて、今日も人々がお店を訪れる。