INTERVIEW:神山 永治さん(かみやま 店主) INTERVIEW
神山 永治さん(かみやま 店主)

仙波の交差点を左折し、秋山川を挟んで東西に広がる一帯が『牧地区』。無形民族文化財に指定されている伝統郷土芸能『牧歌舞伎』を継承してきた地域としても歴史が深い。

「牧の同じ農家さんの畑であっても、うちは仙波の交差点からこっち側(北側)の畑で採れたそばしか使ってないんだよ」

店主の神山さんは牧の玄そばを誰よりも知り尽くし大切に守ってきた。

もともと林業や製材業を営んできた一家だが、時代の流れとともにお父様は途中からサラリーマンとなった。長く縫製の内職を続けていたお母様が年齢で視力が落ち、細かい作業が難しくなってきた頃に提案したのが『そば打ち』。

「あんまり深くは考えてなかったんだけど、昔から打てたから、じゃあやってみればってね。どうせそんなにお客さんも来ないだろうってことで、最初はうちの女房と父くらいで始めて。私も当時はサラリーマンだったんで、土日の仕事が休みのときに手伝ったりしてたんだよ」

玄そばは直接一軒一軒農家に買い付けにいき、ときには収穫を手伝ったり天日干しの加減を自分で確認したりもした。

「今じゃ刈り取りはコンバイン、乾燥も遠赤外線の装置でできるようになったからね。乾燥度は水分計で測れるしさ。当時は干してるの見にいって“あともう2日くらいか〜”なんてやってたからね(笑)。かじってみて、カリっとなればオッケーなんだよ。ただその経験があるから、遠赤の乾燥機になっても自分とこにちょうどいい乾燥度を見極めてお願いできるようにはなったね」

自分たちが納得できる製粉を求め、22年目頃から自家製粉も始めるようになった。

「最初は小さい機械だよね。製粉機のメーカーさんや、昔から自分のとこで挽いてる農家さんたちなんかにちょっとづつ知恵をもらって。そうしてるうちに足りないからもう一台買うか、もう少し大きいのにするか、てやってたら今みたいになったんだよ」

神山さんがサラリーマンを辞め、本格的に店の専業となったのが5年目の頃。今から約20年前という。男手として弟さんも店に入り、製粉やそば打ちを担当した。そば好きなら一度は訪ねたい店として、その名は市内、県内、さらには県外まで広がり、土日の駐車場は県外ナンバーで溢れかえった。よく言われているのは、飲食店オーナーや調理人など、飲食の玄人にもファンが多いこと。原料から調理、空間設計まで、軽やかで楽しげに自分たちのこだわりを反映させる姿はプロたちにとっても眩しい存在であるだろう。

さて、店として円熟期を迎えていた2019年から2020年。台風19号とコロナ禍は容赦なかった。台風当日は途中の道が遮断され、店の裏側ギリギリのところまで地盤が崩れ落ちた。補修のため2週間の休業を余儀なくされたあと、建物の不安はあったものの営業を再開。しかし年があけて4月中旬からはまたコロナ自粛による休業が待っていた。

「なんかある日、またここに新しいの作るぞ!て思ったんだよ。うちのすぐ上のとこの湧き水が秋山川になって、少し下の牧でその水がそばを育てるでしょ。それでできたそばをまたこねて、打って、茹でて、しめて。全部、同じ水でできてるんだよね。うちのそばはこの場所でしかできないんだよ。場所がかわったら違うものになる。そういう意味ではご先祖様に感謝だよね。だから、この先もここでしかやらないしできないだろな」

現在、敷地内では2021年春のオープンを目指した新店舗の建設が着々と進んでいる。水の恩恵を受けた唯一無二の手打ちそば。土地に対する覚悟と信頼関係があってこそ生まれる味を確かめてきてほしい。

佐野市秋山町305
TEL.0283-87-0036
営業時間 / 11:00〜L.O.16:30(土日祝17:30)
定 休 日 / 木曜日
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