GOURMET, SANOMEDIA ラーメンファイル

素朴な味に隠された美味しい余韻の理由。[大和屋]

 佐野市吉水町、訪れる人々を屋号の入った緑暖簾で迎える、手打ちラーメン・手作り餃子の「大和屋」。たくさんのラーメン店が立ち並ぶ街の旨い店の一つである。「旨い」という表現よりも「美味しい」の表現が相応しく、その飾らない味には深みと優しさが存在する。カウンターには飴色になった木の椅子が4つ。ラーメン店というノスタルジーを感じさせる店内にはお腹の虫も騒ぎだすほどの美味しい香りが漂っている。

一つの器の中で織りなす、バランス感覚が一番大事。

 注文して運ばれてくるのはいつもの手打ちラーメン。澄んだ琥珀色のスープの中に手打ち麺とチャーシュー2枚、メンマとネギにナルトが上品に浮かぶ。少しちぢれた細めの手打ち麺は舌触りと食感が美味しい。麺を打ち上げた時の厚さと切る幅を同じにすることで、丸麺にほど近い四角い断面をした手打ち麺。均等な幅が熱の伝わり方も均等にしてくれるという。
修行をしてきた店から受け継いできたこの麺打ちの技術、店主にとってこだわりではなく「いつもの」手打ち麺。スープ作りから麺打ちの工程、器に盛りつけられた脇役たちの味付け。ラーメンは一つの味だけでは成り立たず、それぞれが器の中で織りなすバランスが大事と、「いつもの一杯」についてを言葉少なく語ってくれた。
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細めの手打ち麺と澄んだスープ。オーソドックスな醤油味でさっぱりとしていながらも、ほどよく深い味が「大和屋」のラーメン。

いつもの工程と素材には、美味しい理由が詰まってる。

vol27.5_P03_04_07 小気味のよいリズムで丸く平にしていく生地作りと、仕込まれた餡をひとつひとつ丁寧に手早く包む、流れるような手仕事。生地を伸ばす作業は店主の担当、餡を上手に包み込むのは奥さんの担当。自分で包むと不揃いの餃子になってしまうと店主は明るい笑みをこぼす。一つの餃子となるまでに二人の手間と時間が惜しまれず包み込まれるのが「大和屋の餃子」であり、人々に愛される理由の一つ。店内のホワイトボードに表記された「餃子の具材」について尋ねると「どこの食材かと分かれば、お客様に対して安心感を伝えられる。こだわりだと言えるか分からないけど、初めからやっていることだから。」と店主はこだわりだとは語らない。しかし「日本という国は南北に長く、同じ日でも季節や気候が多少なり異なる。だからその時期にその地域で一番良い状態の素材、その土地の旬である素材を選び使うことを大切にしている。」地産地消で食材をまかなうことは凄くいいことだし、自分も視野に入れていると前置きしながら、現在の仕入れについてを教えてくれた。表面カリッと香ばしく、ふくよかにお腹の膨らんだ餃子たちの甘くて美味しい確かな秘密を知ることができた。
 ここには美味しく、優しい「いつもの」こだわりが当然のように存在する。だから積み重ねてきた経験や日常の手仕事、素材選びについても「こだわり」だと語ることはない。この場所で食べれば知り得ることのできる「いつもの、こだわり」は、また食べたくなる特別な理由を必要としないのかもしれないと感じた。訪れた人に喜んでもらうために、語ることよりも手間と時間を費やす「大和屋」。きっと明日も誰かに美味しい余韻を残していくに違いない。

「いつもの餃子」を作る手仕事には、二人の手間と時間がかけられている。独特のリズムでひとつひとつを「美味しい」へと作り上げていく。香ばしく焼き上がった5つの餃子は、カリッとした焼きの表情。ギュッとつまった熱々の餡たちが皮の中から美味しい香りを伝えてくれる。

手打ちラーメン・手作り餃子 大和屋

佐野市吉水駅前1-2-19
0283-61-1116
昼11:30~14:00、夜17:30~19:30 ※麺・スープ・餃子いずれか終了次第閉店
定休日:毎週月曜日(祝日の場合は営業、翌平日休業)

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