GOURMET, 過去の特集

丁寧に、重ねる。[手打ちそば かみやま]

澄んだ清流が心地良い音色を奏でる佐野市の秋山町、山深い自然の隙間から見える空は高く抜け、その場所の空気は自然の味がする。自然の一部のように佇み、古く趣きのある表情で出迎えてくれるここは「手打ちそば かみやま」。喧噪を忘れて自然の中に身を委ねながら、みずみずしい喉ごしと口の中で香る豊かな蕎麦を堪能できるそば処。

地元でつくられた蕎麦の実を、手間をかけながら大切に自家製粉するという。製粉された白くさらりとした蕎麦粉を、水と混ぜ合わせてあらごねし、しあげに繰り返し押しつぶしながら、表面がつるつるになるまでこね上げていく。体重をのせてその手に伝わるいつもの感触を確かめながら。その日の湿度によって水の量を調節しながら、こねていく職人の技には、力強さと素早さが「丁寧」という時間の中に同居するように見えた。麺台にのせられた蕎麦玉は麺棒で丸く丸く広げられ、均等な薄さで四角形へと形をかえていく。折り重ねられた麺は蕎麦切り包丁でタンタンタンと、規則正しいリズムで細く均一な姿に。温度管理された蕎麦の実から、手間をかけられ、形・表情を何度も変えて、白く細く優しい表情をした「かみやまの蕎麦麺」となっていく。

代々受け継がれてきた場所に現在は、田沼地区にあった古民家を移築して建てられた店舗空間が加わり、より趣のある空間で人々を出迎えてくれる。四方を自然で囲まれ、それぞれの窓から異なる緑の表情が楽しめるこの場所は、自然と同じ時間がゆらりと流れる空間。自然の風味を少しだけ器に加えてくれるような気がした。車いすでもそのまま入場することのできるスペースもあり、味だけではないこの店の優しさとこだわりが伝わってくる。

対面した表情からも伝わるそのみずみずしさは、この地域の水が綺麗であること改めて伝え、口の中で広がる蕎麦の香りは、手間ひまかけられ生まれたことを教えてくれる。生山葵をゆっくりと「の」の字を描くようにすりおろす時間も、この場所で蕎麦を楽しむ醍醐味の一つ。ぴりっと辛くも柔らかい山葵の刺激と風味が蕎麦の味をより深くしてくれる。

耳をすますと清らかな音色が聞こえる自然と調和する「蕎麦」の仕草。日々、黙々と寡黙に、その工程に誠実に向き合うことが、人々に喜ばれることを知っている、このそば処。自然の一部となった時間で涼を楽しむことのできるこの空間では、蕎麦をすする音も自然の一部となっていく。


手打ちそば かみやま

〒327-0517 栃木県佐野市秋山町305
0283-87-0036
11:00〜18:00
定休日:木曜日
http://www.kamiyama-soba.com



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