CULTURE, 過去の特集

街の歴史と歩み続けてきた「若林鋳造所」

 天明鋳物。この街の地名がついた鋳物にはおよそ一千年の歴史があるといわれる。「下野国」と呼ばれていたこの地へ鎮守府将軍として赴任した初代唐沢城主の藤原秀郷公が領地を統治する為、武具製作者として河内の国から5人の鋳物師をこの地へ移り住まわせたことからとされている。

 趣ある暖簾から覗くと静寂の中に天明鋳物が並ぶここ「若林鋳造所」は創業弘化3年(1846年)と歴史と共に歩んできた鋳造所。収集保存されてきた天明鋳物生産用具は現在、栃木県指定有形民俗文化財に指定されている。五代目天明鋳物師であり当主の若林秀真(ほつま)さんに奥の鋳造所を案内してもらった。


 静けさの中に張りつめるような空気感、この空間で日々作業に没頭してる鋳物師・若林さんは「日本で現存する鋳物製造の中で天明鋳物は最古となる。天明鋳物がこれまでに歩んできた歴史には茶道の千利休が天明鋳物で一会を催したなど、聞けば驚く逸話もあるけれど、この街でも市外でも鋳物というと、いわば歴史の中で生きているようなもの」という。重く深く重厚感につつむ鋳物たちと鋳物師の語る言葉は静かに心に響く。ここで鋳物を造ってきた先代たちの時代は、複数人で作業をしていたけど今は私ひとりで造っている。これは天明鋳物師として今を生きる私の役目だと感じているという。「この天明鋳物という歴史の中で生き続けている存在を次の世代、そして後世に伝えていくことが五代目の天明鋳物師としての使命」だとその目は受け継がれてきた歴史、そしてこれからも歩みを継続していくという未来をしっかりと見据えている。

 歴史の中に生きる天明鋳物という存在、この街には長きに渡り歴史を受け継いできた鋳造所が今も数多く歩みを続けている。生活の近くに存在するものではないかもしれない。けれども、その作品に触れてみると胎動する歴史の鼓動の深さを感じることが出来る。この街に今も流れる系譜と歴史の足跡を感じてみるのはどうだろうか。

若林鋳造所

栃木県佐野市大祝町2398
0283-22-0454

若林鋳造所

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