CULTURE, 過去の特集

華やかに魅せる色彩美「藤沼人形本店」

 江戸時代に宿場町として栄えたこの街。当時、日光東照宮の造営に携わった職人たちが住み着き、その技術を駆使した人形で生計を立てていったことからこの街と人形との歴史が始まったと言われる。今も「人形の街」として市内には数多く人形店が点在している。創業百余年の老舗人形店「藤沼人形本店」。雛人形に五月人形、美しく勇壮な人形たちがずらりと並ぶ店内に入ると、これまで受け継がれてきた歴史と豊かな感性から作り上げられた人形たちの彩りに心を奪われる。

 節句人形工芸士。日本人形協会による節句人形工芸士認定制度でその技術・技能を認められた者としての証である。ここ藤沼人形本店の人形師、藤沼ともえさん(号・藤彩)はその一人、そして県内で唯一の女性人形師でもある。脈々と続いてきたこの人形店の二女として生まれ、たくさんの人形たちと触れ合い育ってきた。「子供の頃からここで遊び、その延長でこっちの色よりもあっちの色がいいかな。なんていつも人形を移動させてコーディネートしていました」と健やかな表情で語る。幼きころから自然と磨かれてきた美的な感覚、彼女の手から生まれた人形たちはしとやかな印象にふわりとした優しさを感じる。

 ふわりとした優しさは丸みを帯びた人形の立体感にもあるという。「従来の人形には平たく広がる美しさがある。私の人形には平たさよりも奥行きある高さと丸みを演出し、目に見える布部分を多くすることで立体感を作るように心がけています」。こどもたちの成長を願って買われていく人形たち。だからこれからも、心の伝わるような優しい人形を提供し続けたいという。

 人形師・藤沼藤彩の手に宿る匠の技、鮮やかに彩られ生まれてくる彼女の「子供たち」は新しい命の誕生とともに出会いを重ねていく。一体一体に愛情が込められているからこそ子供たちにとって一生の友達となっていくのだろう。人形の街の歴史と技をその美的感覚で表現し、今も継承し続けるこの場所は一生の友達と出会える場所なのかもしれない。


藤沼人形本店

栃木県佐野市天明町2719
0283-22-1175
http://www.fujinuma.com/

藤沼人形本店

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