CULTURE, 過去の特集

大日様と鑁阿寺。

ふたつの指針が同じ時間を刻み、
ふたつの時間が一緒に歩む場所。
歩幅はいつも同じ。
歴史と文化、思い出と現在。
呼び名で変わる、日常と観光。

石畳歩道と掘りに周辺を囲まれた広い敷地。時間の流れはいつだってゆるやかで、荘厳な建築物たちをいつでも空が見つめてる。栃木県の足利市、地元の人々には「大日様」と呼ばれ親しまれる、史跡足利氏宅跡、鑁阿寺。国宝となった鑁阿寺本堂に訪れる観光客たちの姿はすでにひとつの風景となりつつあり、日を追うごとに新しい足音がこの街と、この場所を賑やかにしている。自然の表情と重ねながら、深い歴史と文化を丁寧に分かりやすく訪れた人々に伝えようとしてくれるこの空間。境内に佇む数々の文化財たちは四季の空と一緒に、訪れた人たちを今日も朗らかに眺め見つめている。

訪れ時間を過ごすと、ここは温故知新の旅を楽しむ人々の時間と、この場所を親しむ人たちの過ごす、日常の時間が混ざり合う場所だと感じた。歴史の残響にこだまするように子供たちの駆け足や遊び声が聞こえてくる。子供たちにとって、ここはおっきなお寺の遊び場所。史跡を見上げるよりも、隣りの子の表情を見つめる時間の方が多いかもしれないし、境内を歩く時間よりもかけっこする時間の方が長いかもしれない。けれども、そんなわがままを大日様は許し、ゆったりと見守ってくれている。日常的にこの場所に訪れ、時間を過ごしている子供たちや街の人々。学生たちの通学路や散歩の寄り道に帰り道。時には遊びの集合場所であったり、「大日様」とあだ名のように呼ばれ、親しまれるこの場所は、これからもずっと街の時間を過ごしていく。人々の歩みと一緒に思い出を重ねて、それぞれの歴史の中にこれからも存在していく「大日様」。


歴史を辿れば室町の時代。市の名前と同じ足利家の居宅。太鼓橋を渡り、楼門をくぐり足を踏み入れた境内には「多宝塔」に「鐘楼」と、多くの文化財たちが佇んでいる。観光で訪れた人々は季節の表情と調和するこの建造物たちに魅了されることだろう。カメラレンズから歴史文化の表情を覗き込む姿や、バスを降りて足早に石畳歩道から歩き訪れた人たち。過去ではなく時代に思考をめぐらせ楽しむ学びの場として、自然の景色と一緒に魅力を伝える空間。この街、この場所に訪れた人々に流れる空気感と一緒に風情を教えてくれるのが、国の宝と認められた「鑁阿寺本堂」。

ふたつの時間を限りなく演出するこの場所。混ざり合うのは日常的な時間と非日常的な時間。ここを訪れた人々に非日常を演出する国の宝、鑁阿寺。ここで日常を過ごす人々と一緒に時間を過ごす街の宝、大日様。

大日様と鑁阿寺。この街に佇むふたつの宝物は、いつまでも変わらない人々の宝であって欲しい。


鑁阿寺(ばんなじ)

足利市家富町2220
0284-41-2627
本堂・一切経堂の中を拝観するときは有料で、15人以下は一律6,000円です。16人以上は、1人増すごとに400円かかります。
(平日は団体対応のみ。日曜・祝日の場合は一切経堂が開いているので、1人400円。)
※見学(お寺によるご説明)可能な日はお寺の諸行事等により異なりますので、直接、鑁阿寺へお問い合わせください。

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